労災保険を勉強していると、こんな疑問にぶつかることがあります。
「事業主がわざと通勤災害を起こしても、費用徴収できないの?」
感覚的には「おかしくないか?」と思いますよね。
でも実は、制度設計にはきちんと理由があります。
この記事では、業務災害と通勤災害で費用徴収の取扱いが違う理由を、わかりやすく解説します!
✅ まず前提:労災保険の費用徴収とは?
労災保険では、原則として労働者が業務や通勤でケガをしたら、国(政府)が保険給付を行います。
しかし、
- 事業主に故意や重大な過失があって事故を起こした場合、
- 国が立て替えた保険給付費用を、事業主から一部または全部徴収できる制度が設けられています。
これが「費用徴収制度」です。
✅ 費用徴収できるのはどんなとき?
災害の種類 | 費用徴収できるか? |
---|---|
業務災害(故意・重大な過失あり) | ✅ 費用徴収できる |
通勤災害(故意・重大な過失あり) | ❌ 費用徴収できない |
つまり、
業務災害では費用徴収できるけれど、通勤災害ではできないというルールになっています。
✅ なぜ通勤災害では費用徴収できないの?
ここが一番大事なポイントです。
項目 | 内容 |
---|---|
業務災害 | 労働者は会社の支配・管理下にいる(=会社に安全配慮義務あり) |
通勤災害 | 通勤中は労働者の自由行動範囲(=会社の支配・管理下ではない) |
つまり──
- 業務中の事故は、会社が労働者を管理している以上、責任を問われる。だから費用徴収できる。
- 通勤中の事故は、会社の管理下ではないから、たとえ事業主に問題があっても労災保険上は責任を問わない。
これが制度の基本的な考え方です。
✅ じゃあ、わざと通勤災害を起こしたらどうなる?
たしかに、事業主が悪意を持って通勤災害を引き起こしたケースもあり得ます。
でも、労災保険の「費用徴収」の枠組みでは、
- 通勤災害については一律に費用徴収対象外
- ただし、別途民事上の損害賠償請求は可能
という整理になっています。
つまり、労災制度内では請求できなくても、
民事裁判などで個別に責任を追及する道は残されています。
✅ まとめ
- 労災保険では、業務災害(故意・重大な過失あり)なら事業主に費用徴収できる
- 通勤災害については、事業主に過失があっても費用徴収できない
- これは「支配・管理下にあるかどうか」が基準になっている
- 悪質な場合は、労災保険とは別に民事責任を問う流れになる
📘「なぜこのルールなのか?」を理解すると、社労士試験でも強くなれます。
また、実務でも「誰がどこまで責任を負うのか」を冷静に判断できる力になります。
引き続き、制度の本質をつかむ学びを続けていきましょう!
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