出入国管理においては、原則として外国人本人が自ら出頭し、申請手続きを行う「本人出頭主義」が採用されています。しかし、実際には多くの手続きで例外が認められ、代理人や取次者による申請が可能です。ここでは、本人出頭主義の原則と、その例外に関する詳細を解説します。
1. 本人出頭の原則
本人出頭主義とは、在留資格に関する申請や届出において、申請者本人が直接出頭しなければならないとする制度です。これは在留資格の確保において、申請内容の信頼性を確保し、正確な手続きを実現するためのものです。
適用される手続きの例:
- 住居地の届出:外国人の住居地変更など、住所に関する情報を正確に申請するため、原則として本人が出頭する必要があります。
- 在留管理:中長期在留者の在留に関する手続きは、本人が出頭することが求められます。
- 在留資格に関する申請:在留資格の変更や更新申請なども、本人出頭が原則です。
2. 本人出頭の例外:代理と取次
本人出頭主義には例外が設けられており、特定の条件下では代理人や取次者による申請が可能です。法第61条の9-3および規則第59条により、例外として代理と取次が以下のように認められています。
代理申請
代理申請は、申請者本人の依頼を受けた親族や法定代理人が、本人に代わって手続きを行う方法です。主に、本人が出頭できない事情がある場合に限り、代理申請が認められます。
代理申請が認められる例:
- 住居地の届出:外国人本人が出頭できない場合、親族などの代理人が手続きを行えます。
- 在留資格変更・更新申請:特別な事情がある場合、法定代理人や親族が代理人として申請することが可能です。
申請取次
申請取次制度は、外国人本人の負担軽減や効率的な事務処理を目的として、一定の条件を満たす機関や個人(弁護士、行政書士など)が代理で申請手続きを行う制度です。この制度により、申請者本人が出頭しなくても申請取次者が申請を代行できる場合があります。
申請取次のメリット:
- 負担軽減:外国人本人が在留活動に専念でき、事務処理が効率化されます。
- 事務処理の適切化:取次機関が承認を受けて手続きを行うため、正確で信頼性の高い申請が期待されます。
- 効率化と混雑緩和:一括申請や適切な書類提出により、窓口の混雑が緩和され、迅速な事務処理が可能です。
3. 在留資格認定証明書交付申請における例外
在留資格認定証明書交付申請は、外国人がまだ日本に入国していない場合に行うため、制度上、本人が出頭することが難しい状況があります。この場合、以下のような例外が認められます:
- 代理申請:受け入れ機関の職員や規則に定められた代理人が申請を行うことができます。
- 取次申請:外国人本人に代わって、取次機関や弁護士、行政書士が申請を行うことが認められています。
このように、本人が入国していない場合の特別な配慮として、代理申請や取次申請が制度化されており、本人出頭の原則が免除される形となります。
4. 申請取次制度の仕組みと承認
申請取次制度は、昭和62年に導入され、その後も対象となる申請や取次者の範囲が拡充されています。特に、事務処理の効率化や申請者の負担軽減を目的として、次のような機関や個人が申請取次者として認められています。
取次者として認められる者
- 行政書士および弁護士:地方出入国在留管理局での登録を経て、申請取次者として認められます。
- 所属機関の職員:受け入れ企業や教育機関の職員が承認を受けることで、取次者としての業務が可能になります。
注意点:
取次者は、申請人の代理として署名や記載内容の訂正を行うことはできません。あくまでも申請書の提出などの手続きに関する事実行為を行う役割に限定されています。
取次者の登録手続きと更新
取次者は地方出入国在留管理局での承認を受け、承認は3年ごとに更新が必要です。また、取次者が所属機関を離職した場合、その時点で取次者としての資格が停止されるため、新たな就職先での業務継続には再度の申請が必要となります。
5. 行政書士の役割と申請取次業務の範囲
申請取次業務は行政書士法との関係で法的な制約があり、特に書類作成は行政書士の独占業務とされています。そのため、申請取次業務においても、以下のような業務範囲が定められています:
- 書類作成の独占:他人の依頼を受け、報酬を得て行う在留申請書類の作成は行政書士が行う業務であり、他の者が行うことは法的に制限されています。
- 取次業務の範囲:行政書士が作成した書類の提出や、外国人本人に代わって在留管理局への手続きを行うことが可能です。
不正行為が確認された場合、地方出入国在留管理局からの懲戒請求が行われることもあり、業務の信頼性が厳しく求められます。
6. その他留意事項
申請取次や代理申請に関する手続きにおいては、次の事項に注意が必要です。
- 本人への出頭要請:申請内容の確認や特定の事情により、地方出入国在留管理局が本人出頭を求めることがあります。特に在留資格の信頼性に関わる場合は、代理や取次が認められず、本人の出頭が必須となる場合があります。
- 通知の方法:申請取次者を通じて処分結果の通知が行われることが一般的ですが、場合によっては申請者本人に直接通知されることもあります。
まとめ
出入国管理の本人出頭主義とその例外は、外国人が在留手続きを行う際に重要なポイントです。代理申請や申請取次制度により、申請者本人の負担軽減や手続きの効率化が図られていますが、適用される範囲や条件が厳格に規定されています。正確な手続きを行うためには、申請取次の役割や代理申請の条件を理解し、行政書士や弁護士など専門家の助言を活用することが推奨されます。
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