近年、定款認証制度に関していくつかの重要な変更が行われました。これらの変更は、法人設立手続きの透明性向上と効率化を目的としています。本記事では、新たな定款認証制度の主要なポイントについて解説します。
目次
1. 実質的支配者となるべき者の申告制度
平成30年10月12日に改正された公証人法施行規則第13条により、以下の申告が義務付けられました:
- 法人成立時の実質的支配者となるべき者の氏名
- 実質的支配者が暴力団員及び国際テロリスト(以下、暴力団員等)に該当するか否か
この制度は、法人の透明性を高め、犯罪組織等による法人の不正使用を防止することを目的としています。
申告手続きの変更点:
- 令和3年7月から:表明保証書の添付が可能に
- 令和4年1月1日から:嘱託人による押印や電子署名が不要に
2. テレビ電話方式による認証制度
平成31年3月29日から、テレビ電話による本人確認が可能になりました。
利用可能なケース:
- 発起人等が定款に電子署名し、自らオンラインで認証を申請する場合
- 発起人等が代理人に依頼し、代理人が定款に電子署名してオンラインで認証を申請する場合
令和2年5月11日からは、代理人による電子署名も可能になり、より柔軟な対応が可能になりました。
3. 定款認証と設立登記のオンライン同時申請制度
令和3年2月15日から、株式会社設立手続きにおいて、定款認証の嘱託と設立登記申請をオンラインで同時に行うことが可能になりました。
条件:
- 株式会社の定款であること
- 登記・供託オンライン申請システムまたはマイナポータルを利用すること
- テレビ電話を使用した電子定款の認証手続きを実施すること
注意点:同時申請を行えるのは、弁護士及び司法書士に限られています。
4. 定款認証手数料の改定
令和5年1月1日から、新しい手数料体系が適用されました。
株式会社または特定目的会社の定款認証手数料:
- 資本金の額が100万円未満の場合:3万1千円
- 資本金の額が100万円以上300万円未満の場合:4万円
- それ以外の場合:5万円
注意点:
- 資本金の額が定款案に記載されていない場合、設立時出資財産の価額が基準となります。
- 一般社団法人及び一般財団法人の定款認証手数料は5万円のままです。ただし、株式会社と異なり、紙定款でも収入印紙4万円は不要です。
まとめ
これらの新制度は、法人設立手続きの透明性向上と効率化に大きく寄与します。実務において重要な変更点が多いため、以下の点に注意が必要です:
- 実質的支配者の申告:法人の透明性確保のため、正確な情報提供が求められます。
- テレビ電話方式による認証:公証役場への直接訪問が不要となり、手続きが簡素化されました。
- オンライン同時申請:手続きの迅速化が期待できますが、現時点では利用できる専門家が限られています。
- 手数料改定:小規模な会社設立のコスト削減につながる可能性があります。
これらの制度を適切に活用することで、より効率的かつ透明性の高い法人設立が可能になると期待されます。ただし、制度の詳細や運用方法は今後も変更される可能性があるため、常に最新の情報を確認することが重要です。
法人設立を検討している方や、関連する実務に携わる方は、これらの新制度について十分に理解し、適切に対応することが求められます。不明な点がある場合は、公証人や専門家に相談することをお勧めします。
コメント