株式会社を設立する際、最も重要な手続きの一つが定款の作成です。定款は会社の組織や活動に関する基本規則を記載した文書であり、会社の「憲法」とも呼ばれます。今回は、定款作成の詳細と注意点について解説します。
1. 定款とは
定款とは、会社の組織活動に関する基本規則およびその規則を記載した書面を指します。株式会社を設立する際には、発起人が定款を作成し、全員が署名または記名押印する必要があります。
定款作成の方法
- 紙の定款:収入印紙4万円が必要
- 電磁的記録:電子データでの作成も可能
2. 定款の記載事項
定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と、記載することで初めて効力が生じる「相対的記載事項」があります。
2.1 絶対的記載事項
- 目的:会社が営む事業
- 商号:会社の名称
- 本店の所在地:会社の主たる事務所の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称及び住所
- 発行可能株式総数
特に発行可能株式総数については、公開会社と非公開会社で規制が異なります。公開会社では、発行済株式総数の4倍を超えることができません。
2.2 相対的記載事項(変態設立事項)
- 現物出資:金銭以外の財産による出資
- 財産引受:会社設立後に特定の財産を譲り受ける契約
- 発起人の報酬
- 設立費用
これらの事項は、定款に記載しなければ効力を生じません。特に現物出資と財産引受については、不当な評価を防ぐため厳格な規制が設けられています。
3. 定款の認証
作成した定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません。これは、定款の存在と内容の明確性を確保し、将来の紛争を防止するためです。
定款変更の制限
原則として、株式会社成立前は定款を変更することはできません。ただし、以下の場合は例外的に変更が可能です:
- 裁判所の変更命令がある場合
- 発行可能株式総数の定めをする場合
- 募集設立の場合の創立総会の決議による変更
4. 定款の備置きと閲覧
定款は、会社が定めた場所に備え置く必要があります。発起人や株主は、定款の閲覧や謄本・抄本の交付を請求することができます。
親会社社員の閲覧権
株式会社の成立後、その親会社の社員も、裁判所の許可を得て定款の閲覧を請求できます。
実務上の注意点
- 現物出資を行う場合は、出資の目的財産、その価格、これに対して与える株式の種類と数を明確に定款に記載しましょう。
- 財産引受を行う場合も、譲渡人の氏名・名称、譲渡の目的財産、その価格を定款に明記する必要があります。
- 設立費用については、法律事務所の賃借料や株式募集広告費用など、会社設立のために支出した費用を記載します。ただし、定款の認証手数料や登録免許税は設立費用から除外されます。
- 公開会社を設立する場合は、発行可能株式総数の制限(発行済株式総数の4倍以内)に注意しましょう。
- 定款の電磁的記録での作成を検討する場合は、公証人との事前相談をおすすめします。
まとめ
定款の作成は、株式会社設立の核心となる重要な手続きです。記載事項の漏れや不適切な記載は、会社設立の無効や将来の紛争につながる可能性があります。専門的な知識が必要となるため、不安な点がある場合は、行政書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
適切な定款作成は、会社の安定的な運営と成長の基盤となります。会社の将来を見据えて、慎重に作成しましょう。
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